微生物モニタリング

マウス・ラット微生物モニタリング

  • 目的

    近年は、実験動物のSPF化が進み、飼育環境も整備されてきたことから、かつてのように発症を伴う激しい感染症は影をひそめ、最近は、症状を示さないいわゆる不顕性感染を受けた動物が問題となってきました。不顕性感染は、実験処置により顕在化することがあり、実験成績を誤らせる大きな原因となります。また、病原体に感染した動物を知らずに飼育していることは周囲の清浄動物に対する汚染源としてもっとも危険であり、気がついたときにはもはや取り返しのつかない事態になっている可能性もあります。
    これらのことを未然に防ぐためには実験動物を特定の検査項目について定期的に検査し、不顕性動物を摘発することが必要です。 しかし、実験動物施設の動物は全てが学内実験者の実験中の動物であり、また検査方法によっては検査対象動物に適さない場合もあります。
    そこで、マウス・ラットを飼育している各飼育室に、施設側で検査用の囮動物(モニター動物)を配置し、定期的に検査をします。検査により特定の項目について微生物学的状態が変化していないことを確認し、マウス・ラット集団の微生物学的な品質管理を行います。
  • 対象動物

    感染実験室を除く施設内の全てのマウス・ラット
  • モニタリング方法

    飼育室毎にモニター用マウスおよびラットを搬入し、対象動物の糞便・床敷を週に1回ケージに加えながら3ヶ月飼育した後、検査に供する。検査は(公財)実験動物中央研究所にて実施する。
    ※東北大学動物・遺伝子実験支援センターによる「マウス・ラットの微生物モニタリングサービス」は2022年12月20日検査実施分をもって終了となりました。
  • モニター動物

    マウス:Jcl、SPF、メス、4週齢、ICR
    ラット:Jcl、SPF、メス、4週齢、Wistar
    1飼育室あたり2匹/ケージを基本とし、飼育室の規模により適宜匹数を増やす。
  • 搬入方法

    購入したモニター動物は、施設到着後に飼育担当者が輸送箱ごと70%アルコールで消毒後して各室へ搬入、検収する。設置場所は特に指定しないが入り口あるいは排気ダクト口の側が望ましい。
  • モニター動物の飼育方法

    給餌と給水

    マウス・ラットいずれも、未滅菌の飼料(日本農産ラボMRストック)を不断給餌で与え、水は自動給水装置またはオートクレーブ滅菌した給水ビンに水道水を入れ、与える。

    照明

    明12時間、暗12時間(8:00点灯、20:00消灯)

    温度と湿度

    温度:20~29℃、湿度:30~70%

    ケージ交換

    原則として1回/週。ケージ交換時、対象動物の全ての交換前ケージからチップ・糞便を少量ずつ回収し、モニター動物のケージへ加える。モニター動物の新しいケージへの移動は一番最後に行う。餌は原則としてケージ交換時に1週間分を適量与える。ケージ蓋の交換は隔月で行う。

  • 検査項目と検査手法

    マウス指定検査項目 検査手法
    Ectoromelia virus ELISA
    LCM virus ELISA
    Mouse hepatitis virus ELISA
    Sendai virus ELISA
    Clostridium piliforme (Tyzzer's organism) ELISA
    Mycoplasma pulmonis ELISA, culture
    Citrobacter rodentium culture
    Corynebacterium kutscheri culture
    Pasteurella pneumotropica culture
    Salmonella spp. culture
    Giardia muris microscopy
    Spironucleus muris microscopy
    Syphacia spp. microscopy
    Aspicularis tetoraptera microscopy
    Helicobacter hepaticus(非定期) PCR
    Pseudomonas aeruginosa(非定期) culture
    ラット指定検査項目 検査手法
    Hantavirus ELISA
    Sendai virus ELISA
    Sialodacryoadenitis virus ELISA
    Bordetella bronchiseptica culture
    Clostridium piliforme (Tyzzer's organism) ELISA
    Mycoplasma pulmonis ELISA, or culture
    Citrobacter rodentium culture
    Corynebacterium kutscheri culture
    Pasteurella pneumotropica culture
    Salmonella Spp. culture
    Giardia muris microscopy
    Spironucleus muris microscopy
    Syphacia Spp. microscopy
    Aspicularis tetoraptera microscopy
    Pseudomonas aeruginosa(非定期) culture
  • モニタリング結果の報告

    検査におよそ1〜2週間かかるため、検体発送から報告書受け取りまでおよそ2〜3週間を要します。ただし、検査で陽性の判定が出た場合は速やかに検査機関から報告を受けることになっています。検査結果は施設玄関フロアーの掲示板に掲示します。
  • 検査結果が陽性の報告を受けた場合

    重篤な感染症の疑いがある場合にはその旨を関係利用者に伝え、再検査や別の手法による検査を行います。最終結果が出るまでの間は飼育管理の規制および動物の持ち込みと繁殖の停止を行う場合があります。重篤な感染症が確認された場合には原則として全動物を処分し、飼育室の消毒を行います。ただし、状況によっては協議の上で、子宮切断、受精卵の移植、受精卵の凍結、体外受精等の方法により動物のクリーンアップを行います。
  • その他

    感染が疑われる異常動物については随時検査を行います。また、実験者の希望によっても随時検査を行いますので、異常を発見した場合は施設にお知らせください。

ウサギ微生物モニタリング

  • モニタリング方法

    飼育中のウサギからランダムに動物を抽出し、滅菌綿棒にて鼻腔スワブを取り馬血液寒天に2日間培養する。検査は(公財)実験動物中央研究所へ委託し、2匹/1飼育室/3ヶ月の頻度で行う。
  • 検査項目と検査手法

    検査項目 検査手法
    Pasteurella multocida culture

細胞株微生物モニタリング

  • 意義と目的

    感染微生物に汚染された細胞株などの生物材料が動物に投与されると、感染するリスクがあります。仮に他の個体へ伝播すれば施設全体の汚染へ発展するほか、人獣共通感染症の病原体であれば飼育担当者や実験者にも被害をもたらすことになります。従って、外部からの導入材料については事前の微生物検査を義務付けています。
  • モニタリング方法と検査項目

    生物材料の持ち込みを希望する際は「様式7:細胞持込事前調査書」を【学内限定】各種申請・申込みからダウンロードし、必要事項を記入の上検査報告書を添付してご提出ください。

各分野で所有する飼養保管施設のモニタリングについて

  • 医学系研究科附属動物実験施設(中央棟、臨床分室、0号館)をご利用で、所属研究室にマウス・ラットの飼養保管施設(飼育室)をお持ちの方へ、相互感染防止の為、平成22(2010)年11月1日より各自の飼養保管施設の「病原微生物検査報告書」の提出を義務化しております。
    詳細は各飼養保管施設の微生物検査結果報告書の届出制度についてをご覧ください。