実験動物の福祉を考えるとき、2つ配慮が求められる。一つは動物実験における3Rである。特に苦痛の軽減ないし排除は研究者が最も配慮しなければならないことである。
一方、2番目は、実験動物を飼育するに当たって、飼育環境への配慮が求められるようになってきていることである。それが飼育環境のエンリッチメントである。エンリッチメントは豊富化とか豊饒化の意味であるが、実験動物の飼育環境の質を高めることである。例えば米国のNational Research Councilの動物実験ガイドラインでは特に霊長類や犬などには社会的環境エンリッチメントと構造的環境エンリッチメントを整備することが求められている。
動物を飼育する環境が豊富になることが良いことは誰でも感覚的には理解できるが、科学的に証明できるのか、そして実際どうすることが求められるのかは非常に難しい問題であり、日本ではまだまだ一般的にはなっていない。
今回の研究会ではこのことを取り上げ、ラットのようなげっ歯類での研究では飼育環境は研究結果にどのような影響を与えるのか、また、霊長類の環境エンリッチメントとはどのようなことが求められているのか、この研究の第一人者の方々にお話しをうかがう。