シンポジウム「よりよい動物実験をめざして!」
一インターナショナルハーモナイゼーションー
シンポジウムの開催にあたって
東北大学大学院医学系研究科 笠井 憲雪
福島県立医科大学医学部 片平 清昭
最近、海外へ留学する先生方が増えております。そのような方からの断片的な話として、欧米では動物実験に対する社会の考え方が日本の場合とは状況がかなり異なっているということを耳にします。また、国内で行った研究成果を国際学会で発表したり、海外の雑誌に論文投稿する機会が増えておりますが、動物実験手法の点で問題視される場合もあると聞いております。研究者にとって、長期間にわたって多大な労力と経費をかけて行った研究結果が、国際的な場で評価の機会さえ得られないようでは非常に残念です。欧米では、情報公開制度も普及し、動物実験反対運動も活発に展開されておりますので、研究機関においても動物実験に対して相当慎重にならざるをえないのでしょう。欧米における動物実験の規制はそれぞれの社会的背景に基づくものと考えられ、ヨーロッパ諸国と北米では規制方式にも違いがみられます。
さて、東北動物実験研究会も発足して今回で丁度10回目を数えることとなります。21世紀には、あらゆる分野での国際交流がこれまで以上に深まることと思います。動物実験に関しても、当然のことながら国際的な調和、整合性についても無視できません。そこで、今回は、標記のようなシンポジウムを企画いたしました。
大和田先生による「英国における動物実験の規制」や、松田先生の「北米における動物実験の規制」のご講演は我々にとって大変貴重な欧米の情報であると思います。杉野先生の「英国での動物実験のためのPersonal License取得体験」は先生ご自身の体験談であり真実味があり、興味深いものです。また、「日本実験動物医学会認定獣医師制度の発足と国際的ハーモナイゼーション」では、米国において実績のある“実錬動物専門獣医師”を手本として発足した日本実験動物医学会認定獣医師制度について、笠井が解説します。
以上のような講演内容は、これから欧米へ留学する方はもちろんのこと、国際的ハーモナイゼーションを考えた動物実験を行う上で参考となるはずです。そして、今回のシンポジウムを通じて動物実験指針を守ることが重要であるという認識をもっていただければ幸いです。そのような認識が国際的にも通用する研究として評価されることにつながるものと考えます。
最後に、このシンポジウムを企画するにあたりまして、ご講演をお願いしましたところ、公私ともにご多忙中にもかかわらず快くお引き受けいただきましたそれぞれの先生方には深く感謝申し上げます。