補遺4  実験動物の安楽死処置法

安楽死とは、迅速かつ苦痛を伴わない安楽な死を意味する。一方で、安楽死後の試料採取や検索に障害とならないよう実験目的に沿うような方法を選択しなければならない。又、重要なのは死の確認である。呼吸停止及び心停止を確実に確かめなければならない。安楽死の方法としては、大きく二つの方法がある。

(1)物理的方法
  頸椎脱臼、断頭、後頭部殴打等の方法があるが、これらの方法は熟練した実験者が行えばマウスやラット等の小型実験動物の安楽死法として有効である。万一失敗した時は、実験動物にとって苦痛となりかねないので、細心の注意が必要である。

・頸椎脱臼:マウスを平らな台上に置き、一方の手の親指と人差し指で頭の後ろ(頚背部)を下方に押しつけ、他方の手で尾のつけ根の近くを持って身体を伸ばし固定する。次いで、頭を固定している手を前方へ押し、尾を持っている手を後ろ上方に一気に強く引く。正しく頸椎が脱臼されれば、瞬間でマウスの身体の力が抜けてしまう。一時的に体動が残るが間もなく止まる。瞬時に意識消失、死亡するため動物の苦痛は少ない。実験に支障がなければ事前に軽麻酔を行っておくのもよい。ラットの場合も同様の方法で行うことが出来るが、かなりの熟練と力がいる。

・断頭:マウスの場合はよく切れる鋭利なハサミを用いる。ラットの場合は専用の断頭器が市販されているので利用する。この場合も実験に差し支えなければ事前に軽麻酔を施すことが望ましい。

・後頭部殴打:この方法は、ラットの場合に用いられる。堅い木製の棒か木槌を用いて確実に行う必要がある。正確に実施すれば、意識の消失は瞬間であるが、若いあるいは小さいラットであっても一撃で死に至らせるにはかなりの熟練が必要である。

(2)化学的方法
・ペントバルビタールの過量投与

 この麻酔薬は意識消失が早く、不安、興奮はなくその効果は用量、濃度及び投与速度に依存し、スムーズに安楽な状況にでき、安らかに死に至らしめることができる。又、マウスからイヌ・ブタまで各種の実験動物の安楽死に用いることができる。
 麻酔適用料の3〜4倍量又は100〜120J/Lを静脈内又は腹腔内投与を行う。(補遺3参照)

・ジエチルエーテル
 吸入麻酔薬であり、実験小動物で用いられる。動物を入れることのできる透明なガラス製の標本瓶やデシケータの底にジエチルエーテルを入れて気化させ、動物を入れる。死亡までに時間がかかるため、十分な暴露時間と死亡の確認が必要である。エーテルは引火性、爆発性があり、実験室での事故も報告されていることから、実験室には十分な換気装置を備える必要がある。

・炭酸ガス
 炭酸ガスには麻酔作用があり、まず意識消失が起こり、ついで無意識下で酸素欠乏により死亡する。つまり、死亡の第一の原因は酸素欠乏であるために、死後変化として血液ガスの変化とともにほかの組織に対する低酸素血症による影響を考慮する必要がある。
 ガスは、炭酸ボンベやドライアイスから供給する。炭酸ガス安楽死専用容器かあるいは厚手のビニール袋にケージごと動物を入れてから空気を抜き炭酸ガスを送る。ドライアイスを使用する場合は、水の入った小容器を専用容器又は袋の中に置き、ドライアイスをその水の中に入れ、炭酸ガスを発生させる。
 炭酸ガス濃度の高い空気を吸えばヒトでも酸素欠乏を起こすため、室内の換気と装置の取扱いには注意が必要である。

・硫酸マグネシウム(MgSO4)又は塩酸カリウム(KCL)
 高用量投与により完全な神経遮断と低酸素血漿により死亡する。これらの薬物は鎮痛・麻酔作用がないため、動物をあらかじめ全身麻酔を行う必要がある。


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